月経前症候群という言葉を御存じでしょうか?英語ではpremenstrual syndromeといい、略してPMSと呼んでいます。月経前に生じる心と身体両方の症状です。正確には、「月経開始の3~10日前からはじまる精神的、身体的症状で月経開始と共に減退ないし消失するもの。」と定義されています。症状は多様で150にも及びます。米国では、家庭生活への影響や仕事を含む社会生活への影響の大きさから、無視できない疾患として重視されています。
この疾患が医学的に正式に報告されたのは1931年のことでまだ最近です。日本でこの病気について紹介されたのは1953年のことであります。しかし漢方の世界では数千年も前から、月経前にだけおこる女性の身体および心の変調について記載があります。この言葉を知らなくとも、まだ月経のない男性ですら女性が月経前に急に涙もろくなったり逆にイライラしたりすることは何となく心得ているでしょう。しかし残念なことに社会はそれに対応していません。PMSでも症状が重い人は、仕事に支障を来し傍目にはさぼっているように見られてしまったり、集中力の低下を非難されたりしてしまいます。まだまだ、気の持ちようだとか甘えているなどと一蹴されてしまうことが多々あるようです。
症状は、(1)精神症状として、不安感、憂うつ、涙もろい、情緒不安定、起こりやすい、イライラなど。(2)身体症状として、頭痛、むくみ、疲労感、下腹痛、めまい、ほてりなど。(3)行動の異常として、食べ物への執着、食欲増進、引きこもり、集中力の低下、判断力の低下などが挙げられます。みなさんも程度の差はあれ思い当たるものがあるのではないでしょうか。自分でコントロール可能な程度の症状であればよいのですが、明らかに社会生活に支障をきたす場合はまずは産婦人科に相談しましょう。PMSの治療については、次章で述べたいと思います。
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