心のありよう、ストレス発散についてお話します。更年期障害、特に体の不調よりも心の不調でおみえになる患者さんたちは、兎角さまざまな問題を抱えている方が多いです。先生ちょっと聞いてくださいとばかりに言葉の洪水のようにお話する方や、こちらからさりげなく話題をふると琴線に触れるがごとく涙を浮かべひとつひとつ確かめるようにお話が始まる人もいます。じっくり話を聞き、対峙ではなく同峙の姿勢で理解し、時に意見を挟みます。人生のなんたるかを知っているわけではありませんが、客観性をもって出来事や状況の分析や判断ができますので、何らかの新しい展開をもってお帰りいただけることもあります。たいていの方は話をすることでかなりの部分心の靄が晴れるようです。私もそうですが、飲んで愚痴って翌日さっぱり。何で怒っていたか忘れてしまうことしばしばです。
人に話すことは極めて有効なストレス発散であり解消法であります。かなりプライベートな内容ですと簡単には人に相談できないかもしれません。またこんな世の中ですから孤独を感じている方も多いはずです。でも誰かに話をすることで気持ちが楽になることは明らかです。そういった友人を持つことが大切でしょう。もちろん家族でもいいです。一つだけルールがあります。自分の話を聞いてもらうには、人の話も真摯に聞く、また聞いてもらいたいと思える人になることです。
角田光代さんの小説「対岸の彼女」にこんな一節があります。「軽い酔いも手伝って小夜子はべらべらとしゃべった。最近になって知った。しゃべることは、気持ちいいのだ。義母のことも、夫の不用意な発言も、口に出せば喜劇性を帯び、すぐに忘れられる。言わずにためこむと、些細なことがとたんに重い意味を持ち、悲劇性と深刻味を帯びる。」まさにその通りで、ため込むとどんどん深みにはまっていきます。人に話すと自分のことがまるで他人の所業のように、少し冷静に客観性をもって見れるようになるのです。そうすると悩んでいる自分が少しおかしく思えたりすることってありますよね。現代は想像を絶するストレス社会ですから皆さんも上手に乗り切ってください。
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